感染地図

 

感染地図: 歴史を変えた未知の病原体 (河出文庫)

感染地図: 歴史を変えた未知の病原体 (河出文庫)

 

 公衆衛生を学習したことのある人なら読んだことがあるだろう。最近の存在も知られていなかった19世紀後半、衛生環境が最悪の大都市ロンドンで、コレラアウトブレイクの原因をつきとめたスノーとホワイトヘッドの物語。コレラが糞口感染する病気であることを知っている現代の人間からすれば、瘴気説にとらわれてしまった、公衆衛生局のコレラ調査委員会が空気(悪臭)がコレラの原因であるという誤った常識に囚われて、真のコレラアウトブレイクの原因(コレラ菌によって汚染された下水が上水に混ざること)に辿りつけなかったことがバカバカしく見えるかもしれない。データを集めていたという点では、スノーとホワイトヘッドの活動も公衆衛生局の活動も共通であるが、そもそもバイアスのかかった態度では、データの収集方法と解釈に限界があることがよく理解できた。ビッグデータ、リアルワールドデータといった言葉が喧しい現代においても19世紀の人々の経験が役に立つかもしれない。